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材料調査

金属材料の組織試験

このページでは金属材料の組織試験の実際をご紹介します。

マクロ組織試験:

金属材料の表面または断面を磨き、硝酸や塩酸などの酸で強めに腐食し、肉眼または数十倍の実体顕微鏡で観察することにより識別される組織をマクロ組織と言います。このマクロ組織を観察することによって、ミクロ組織観察(下記)では分からないような材料全体の組織の特徴を観察することができます。切断面であれば、断面形状も観察することもできます。マクロ組織観察は主に次のような用途に利用されています。

(1)偏析状態

偏析とは…金属が凝固する過程で生じる化学成分の偏りのことを指します。
(オレンジジュースを凍らせた時に一口目が濃い味になる現象と同じイメージで、金属も固まる過程で成分の濃淡が生じます。)

偏析のイメージ
偏析の例(逆V偏析)

(2)表面欠陥と金属組織の位置関係

欠陥発生位置と金属組織の位置関係を観察します。
例えば、欠陥が偏析部に発生していれば、偏析が一因となった欠陥と推定できます。また、対象が溶接部であれば、欠陥発生位置と溶接組織との位置関係は欠陥発生原因を知るための最初の一歩となります。

(3)欠陥の分類(参考:JIS G0553)

樹枝状組織、インゴットパターン、多孔質、ピット、偏析、気泡、介在物、パイプ、毛割れ、もめ割れ、圧延きずなどです。

ミクロ組織試験:

肉眼または数十倍で観察するマクロ組織に対して、数十~千倍程度の光学顕微鏡で観察される組織をミクロ組織と言います。金属材料における機械的、物理的諸性質はその微視的な組織と密接な関係があります。ミクロ組織観察は主に次のような用途に利用されています。

ベーナイト組織のイメージ
ベーナイト組織
フェライト+パーライト組織のイメージ
フェライト+パーライト組織

(1)金属組織の区分

フェライト、パーライトなどに代表される組織分類を行い、対象材の組織として妥当か否かを確認します。

(2)結晶粒の大きさ

結晶粒の大きさは強度と関係があるため、対象材が規定の粒サイズとなっているかを確認します。

(3)材料の製造履歴

素材の製造方法(鍛造、鋳造、冷間加工)や熱処理による組織の状態を確認します。

(4)炭素量の推定

炭素鋼のミクロ組織からおおよその炭素量を推定することができます。

(5)組織の劣化状態

高温で使用される金属は時間とともに組織に変化が生じます。
組織変化から劣化状態を推定することができます。

(6)非金属介在物の種類とその形状や大きき、分布状況

非金属介在物は製造工程で鋼材内部に埋め込まれた複合材料であり、母材の組織と異なる形状で確認することができます。この非金属介在物の形状や大きさ、分布を拡大観察し、「鉄鋼の清浄度」を確認することができます。なお、非金属介在物が少ない鋼材ほど高品質であるとされています。

マクロ・ミクロ組織試験は、製品の品質検査、製造時に検出された欠陥の発生原因調査、供用品の劣化状況調査、壊れた製品の破損原因調査などに利用されています。

結晶粒度測定のイメージ
結晶粒度測定

・製品の品質検査:

マクロ・ミクロ組織試験は製品品質検査の一部(非破壊検査や寸法検査と同じ位置付け)として、製造検査スペックに組み込まれます。マクロ・ミクロ組織試験は通常、試験体から試験片を切り出す必要があるため、鋳造、鍛造、圧延品等では製品の一部である余長部あるいは別途同じ条件で製造されたものを試験体とし、溶接部では製品と同じ条件で溶接されたものを試験体とします。
マクロ組織観察は、主に溶接部の検査に用いられ、有害な欠陥(割れや融合不良など)の有無や断面形状(溶接止端形状やのど厚など)の良否などの検査に用いられます。
ミクロ組織観察は、微視欠陥の有無(非破壊検査では検出困難なもの)や結晶粒サイズ判定、金属組織の区分(狙った金属組織か否か)などに用いられます。

溶接部マクロ組織のイメージ
溶接部マクロ組織の例

・製作時に検出された欠陥の発生原因調査や供用品の劣化状況調査(スンプ試験):

製作中の製品や供用中の製品は試験片採取が困難な場合が殆どです。このような場合は、スンプ試験という手法を用いて金属組織の観察が行われます。スンプ試験(SUMP)は鈴木純一氏の発明で、鈴木式万能顕微印画法(Suzuki’s Universal Micro Printing Method)の頭文字を取って、SUMP(スンプ)としたものです。

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