軸物のフェーズドアレイ法による亀裂検査
軸応力集中部等の亀裂発生をチェックします
車軸やモーター軸などの回転軸に繰り返し荷重がかかり、疲労破壊等により亀裂が発生または進展する事例がよく見かけられます。実機での疲労破壊は、段付部、キー溝、ネジ部などの応力集中部から発生することが多く特に注意が必要です。通常、保守検査ではケースから回転軸を取り出し表面開口欠陥検査を行いますが、設備の解体が必要で多くの時間と費用がかかります。またこの検査ではきずの進展状況が確認できません。SISCOでは余計な解体をせずに軸部の亀裂発生の有無とその進展状況を、フェーズドアレイ超音波探傷法(PA-UT※1)を用いて軸を端面から検査できます。
一般的な超音波探傷法は固定角の超音波ビームを照射するため、照射された超音波に対して垂直方向のきずでなければ検出能は低下します。PA-UTは複数の振動素子の送信タイミングを制御し、超音波の進行方向を偏向させたり任意の距離で集束させることが可能であり、きずの検出性が上がります。またリアルタイムで探傷角度位置の断面情報が表示されるので、構造が複雑な検査対象でもきずによる信号と形状による信号の識別がしやすくなります。身近にみられるフェーズドアレイ超音波技術は、1970年代に医療分野で登場し、強力な磁石でできた筒の中に入り、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する検査手法としてMRI(magnetic resonance imaging)検査と言うものがありますが、その技術を利用したものです。その後、欧米にて原子力分野での保守検査技術として開発し、コンピューター技術が進歩してきた近年では工業分野でも使われるようになってきました。
※1 Phased Array Ultrasonic Testingの略
フェーズドアレイ超音波探傷法の特長
- 任意の距離で超音波を集束 & 任意の角度で超音波を照射できます。
→1個のフェーズドアレイ探触子で様々な条件の探傷が可能!きず検出能が向上する! - 断面情報を含むSスコープやBスコープ、Cスコープがリアルタイム表示できます。
→エコー検出位置を特定しやすい!疑似エコーを判断しやすい!
→検査知識が無くてもきずの性状を解釈しやすい!
→広範囲の検査を簡便に行えます!
検査データの解析には以下の情報が必要となります。
- 図面、材質などの被検体
- きずの進展の原因に関する情報(例:応力集中部など)
- 表面状態の情報→探傷面の粗さや曲率の程度、超音波の入射に障害となりそうな加工の有無(例:キー溝や穴など)
- 検査結果の評価、検証ができる試験体(キャリブレーション ブロック)の存在
軸の図面上に超音波エコー強度を色表示するので、亀裂発生箇所を特定しやすい。
こんなポイントが「強み」です。
- 神鋼グループ内の多種軸物検査に実績があります。
- 試験体製作によるサンプルトライ、シミュレーションを用いた検査性能の事前検討もサポート可能です。
適用分野
- トリッパー軸
- 台車車軸
- ボルト、ロッド、ピンなど多数
対象分野
- 製鉄
- 造船
- 発電・ガス
- 石油・エネルギー
- 機械装置